三海域イニシアティブ(3SI)参加国 2020年のICTセクター付加価値が7300万米ドルに
08.09.2023
三海域イニシアティブ(3SI:バルト・アドリア・黒海イニシアティブ)参加国における情報通信技術(ICT)セクターが急成長しつつある。三海域イニシアティブ(3SI)参加国のICT財・サービスの輸出総額は1億5400万米ドルにのぼった。ICT産業は三海域イニシアティブ(3SI)参加国において7300百万米ドルの付加価値を生み出し、同地域のGDPの4.7%を占める。この経済実績には、参加国におけるデジタル化の進展とも関係がある。デジタル経済・社会インデックス(DESI)によると、三海域イニシアティブ(3SI)参加国は4カテゴリーのうち3つのカテゴリーにおいて、ランキング首位のフィンランドとの差を縮めた。ポーランド経済研究所(PIE)は、中東欧諸国のデジタル産業連合であるCEEデジタル連合と共同で、報告書「中東欧諸国におけるICTセクター 地域成長の原動力」において、3SIにおけるデジタル経済の発展状況や、同地域におけるICTセクターの役割および重要性を紹介している。
三海域イニシアティブ(3SI)参加国がEUのデジタル化先進国に追随
エストニアを除く三海域イニシアティブ(3SI)参加国は、DESI指数で測定されるデジタル開発レベルの上位にランクされてはいないものの、年々首位との差を縮めつつある。このような現象が最も早い分野は、デジタル行政サービスである。TSI 5カ国(スロベニア、オーストリア、リトアニア、クロアチア、エストニア)は、企業によるデジタル技術の利用に関する指標を含むデジタル統合のカテゴリーにおいて、EU平均を上回っている。一方、スロベニアは、持続可能な開発、環境保全のためのICT利用という点では2位であり、3つのサブカテゴリーで三海域イニシアティブ(3SI)のリーダー格である。
「DESIランキングの各項目では三海域イニシアティブ(3SI)参加国が下位になることが多いが、ランキングの順位自体が歴史的・構造的に決定されることが多いため、スコアの経年変化を見る価値がある。また、首位からの遅れが大きい分野は、行政からの影響が間接的にとどまることについても留意すべきである。例えば、企業におけるテクノロジーの活用である。一方、デジタル行政など、最も差を縮めたことが顕著な分野から、三海域イニシアティブ(3SI)参加国の行政がデジタルソリューションを効果的に業務に導入し、国民へのサービスの質を向上させていることが窺える」と、ポーランド経済研究所(PIE)デジタル経済チームのアナリスト、ヤクプ・ヴィトチャク氏は強調する。
三海域イニシアティブ(3SI)参加国経済におけるICT分野の重要性が向上
三海域イニシアティブ(3SI)参加国のICT部門は、急速な発展を特徴とする。これはGDPに占める付加価値が持続的に増加していること、雇用が創出されていること、加えて活況な貿易取引高により証明される。2015年から2020年の間にICT分野で創出された付加価値は、平均で10%の成長を遂げ、GDP比では4.7%に達した。就労者数の急増も、同地域におけるICTの重要性の高まりを裏付ける。2020年にはおよそ140万人がICTサービスに従事しており、EU全体のICT部門就労人数のほぼ4分の1を占めている。三海域イニシアティブ(3SI)参加国は世界貿易においても確固たる地位を占めており、財貿易の約4%、ICTサービス貿易の約5.5%を占めている。ICT財の輸出は、コンピューターおよび周辺機器(33%)、電気通信(31%)、家電(24%)が中心であり、海外におけるICTサービスについては、コンピューターサービス(81%)が中心である。ICTサービスおよび機器の販売における主要な貿易相手国は、引き続きドイツおよび米国である。
「この地域におけるICTセクターの重要性が高まっている。三海域イニシアティブ(3SI)参加国のデジタル産業の柱は、今日実質的に中欧経済の成長エンジンであるとの認識が着実に高まっている。その巨大な経済的潜在能力を最大限引き出すためには、地域における緊密な協力、および三海域イニシアティブ(3SI)参加国が参画する野心的な国際デジタル・プロジェクトの進展が必要である。我々のCEEデジタル連合における活動は、まさにこの協力の深化を目的とする」と、デジタル・ポーランド協会の会長であり、中東欧地域のデジタル産業の連合体であるCEEデジタル連合の発起人ミハウ・カノヴニクは述べている。
グローバル経済チームのシニア・アドバイザーであるバルトシュ・ミハルスキは、「ICT分野の貿易が、総額においても付加価値においても増加したことは、三海域イニシアティブ(3SI)参加国の経済が国際的な分業メカニズムやグローバルに機能するバリューチェーンに効果的に組み込まれたことを意味する。これは、外国からの直接投資の流入の結果である。「同時に、三海域イニシアティブ(3SI)参加国の経済は課題に直面している。輸出に占める国内での付加価値の割合を高めること、グローバル・バリューチェーンにおける地位低下のリスクに備えること、ICT製品に先端技術および独自性を備えさせるための相互協力を促進することによって競争力を強化することである」との見解を示している。
三海域イニシアティブ(3SI)参加国に必要な自国ブランド販売促進とインフラ投資
パンデミックやロシアによるウクライナ侵攻といった近年の出来事は、各国経済の強靭性を試すこととなった。こうした中で、ICTセクターが三海域イニシアティブ(3SI)参加国の強みであることが証明されたことは重要な点である。特にITサービス分野における雇用は堅調な伸びをみせた一方で、近年この地域では、新興の「ユニコーン」(評価額が10億米ドル以上のIT企業)が出現している。しかし、三海域イニシアティブ(3SI)参加国の弱点は、代表的なブランドが存在しないこと、および地域協力が限定的にとどまっていることである。これまでの構想からは、地域の協力や発展の可能性は窺えるものの、そのニーズの規模やプロジェクト進展のペースは、今後数年間で変化することを保証するものではないと言える。
「大規模なインフラ投資と、加えてデジタルコンピテンシーを向上させるプログラムや、ITやハイテクのスペシャリストを教育するプログラムが不可欠である。同地域が製造業の分野で(生産チェーンの移転や短縮化により)さらなる投資を呼び込むことが見込まれるが、熟練した人材の不足や、企業によって一層強調されつつあるインフラの欠陥が障壁となる可能性がある。同地域の国々がこれらの障壁を克服することができれば、三海域イニシアティブ(3SI)参加国はサービス分野における地位をさらに強化することが見込める」と、ポーランド経済研究所(PIE)デジタル経済チームの責任者イグナツィ・シフィエンチツキは指摘する。
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ポーランド経済研究所(PIE)は、1928年に設立された公的な経済シンクタンクで、主な研究分野は、マクロ経済学、エネルギーおよび気候変動、対外貿易、経済見通し、デジタル経済、行動経済学である。ポーランド経済研究所は、国際情勢を考慮しつつ、ポーランド経済および社会生活の主要分野に関する報告書や分析および提言を提供している。
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CEEデジタル連合(CEE Digital Coalition)は、中東欧のデジタルおよび新技術産業の連合であり、同地域の経済および情報社会のデジタル変革を加速させるための活動を行う。また、デジタル分野における三海域イニシアティブ(3SI)参加国間の緊密なビジネス協力の促進をも目指す。CEEデジタル連合は、2020年にデジタル・ポーランド協会により発足し、現在、11の参加国と18のデジタル産業団体が加盟する。
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